2019/09/18

JEPでは語れないJava SE 13

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アメリカ西海岸時間の9月17日にJava SE 13がリリースされました。

ちょうどサンフランシスコではOracle Code Oneが開催されていて、櫻庭も参加しています。OC1に参加しているのでなかなか書く時間がとれないのですが、恒例となっているのでJEPで提案されている以外のJava SEの変更をまとめておきます。

Java SE 13も変更はかなり少ないです。提案されたJEPは5個。ライブラリに関するJEPはなく、言語使用に関するJEPが2つです。

1つがswitchが文から式になるということ(JEP 354)。Java SE 12でもPreview機能で入っていましたが、再検討されて新たにPreview機能として入っています。値を返す時のyieldが一番の違いです。

もう1つが、テキストブロック(JEP 355) こちらはJava SE 12で入らなかったJEP 326 Raw String Literalの再検討版です。もちろん、テキストブロックもpreview機能なので、今後変更される可能性があります。

 

さて、本題のAPIの方です。こちらもそれほど変更は大きくありません。

今回もABC順にならんでいます。同じように、セキュリティ系のAPIはちゃんと理解していないので、省略してます。

 

廃止になったAPI

Java SE 13では2つのメソッドが廃止になっています。

いずれも、Java SE 9で@DeprecatedのforRemovalがtrueになったメソッドです。

  • java.lang.Runtime.traceInstructions(boolean)
  • java.lang.Runtime.traceMethodCalls(boolean)

Java SE 12以前のJavadocを見ていただければ分かりますけど、この2つのメソッドの説明は"Not implemented, does nothing." なぜ、今まで残していたのか不思議なくらいですねw

 

廃止予定のAPI

廃止予定APIの追加は多いです。

パッケージ

  • javax.security.cert

クラス

  • javax.security.cert.Certificate
  • javax.security.cert.X509Certificate

例外

  • javax.security.cert.CertificateEncodingException
  • javax.security.cert.CertificateException
  • javax.security.cert.CertificateExpiredException
  • javax.security.cert.CertificateNotYetValidException
  • javax.security.cert.CertificateParsingException

メソッド

  • java.lang.String.formatted
  • java.lang.String.stripIndent
  • java.lang.String.translateEscapes
  • javax.net.ssl.HandshakeCompletedEvent.getPeerCertificateChain
  • javax.net.ssl.SSLSession.getPeerCertificateChain

javax.security.certパッケージは、java.security.certパッケージを使うようにということです。javax.security.certパッケージはJava SE 9で@Deprecatedになったのですが、Java SE 13でforRemoval=trueになったということで、廃止することが決まったということです。

Stringクラスの3つのメソッドはJava SE 13で追加されたメソッドです。Java SE 13で追加されたのに、forRemoval=trueというのは、どういうこと?という感じですね。

これらのメソッドの機能については後述しますが、いずれもテキストブロックに関連しているメソッドなのです。つまり、テキストブロックがpreviewから正式な仕様に変更される時に、これらのメソッドも変更されるかもということを示しているわけです。

javax.net.sslパッケージの2つのメソッドもjavax.security.certパッケージに関連したメソッドです。HandshakeCompletedEvent.getPeerCertificateChainメソッドは返り値がX509Certificateクラスの配列なのです。今後はgetPeerCertificateChainメソッドではなく、同じクラスのgetPeerCertificatesメソッドを使うようにします。

SSLSession.getPeerCertificateChainメソッドも同じで、代わりにgetPeerCertificatesメソッドを使うようにします。

 

追加されたAPI

java.langパッケージ

JEPにはなっていないのですが、Java SE 13ではUnicode 12.1をサポートしています。その関連で2つのクラスに定数が増えました。

Character.UnicodeBlockクラス

UnicodeBlockクラスはその名の通り、Unicodeのブロックを表す定数を定義しているクラスです。Unicode 12.0で導入されたブロックが追加になりました。

  • EGYPTIAN_HIEROGLYPH_FORMAT_CONTROLS
  • ELYMAIC
  • NANDINAGARI
  • NYIAKENG_PUACHUE_HMONG
  • OTTOMAN_SIYAQ_NUMBERS
  • SMALL_KANA_EXTENSION
  • SYMBOLS_AND_PICTOGRAPHS_EXTENDED_A
  • TAMIL_SUPPLEMENT
  • WANCHO

Character.UnicodeScript列挙型

enumのUnicodeScriptにもUnicode 12.0で導入されたスクリプトが追加になりました。

  • ELYMAIC
  • NANDINAGARI
  • NYIAKENG_PUACHUE_HMONG
  • WANCHO

 

追記

Oracleの佐藤さんに、Java 13が対応しているUnicodeのバージョンが12.0ではなく、12.1と教えていただきました。本文は修正してあります。

なお、対応しているUnicodeのバージョンはjava.lang.CharaccterクラスのJavadocに記述してあるそうです。Java 13の場合は以下のように表記されています。

Character information is based on the Unicode Standard, version 12.1.

(Java 13 CharacterクラスのJavadocより引用)

 

Stringクラス

前述したように、Stringクラスにはテキストブロック関連のメソッドが3つ追加されました。しかも@DeprecatedのforRemoval=trueなので、コンパイル時に警告が出ます。

  • String formatted(java.lang.Object... args)
  • String stripIndent()
  • String translateEscapes()

J2SE 5でstaticメソッドのformatメソッドが導入されましたが、formattedメソッドはそれのインスタンスメソッド版です。

jshell>  import java.time.*

jshell> "%s%n".formatted(LocalDate.now())
|  警告:
|  java.lang.Stringのformatted(java.lang.Object...)は推奨されておらず、削除用にマークされ ています
|  "%s%n".formatted(LocalDate.now())
|  ^--------------^
$1 ==> "2019-09-17\r\n"

jshell>

formatメソッドもformattedメソッドも内部ではjava.util.Formatterクラスのformatメソッドをコールしています。

stripIndentメソッドは複数行からなる文字列の先頭文字がホワイトスペースだった場合、前詰めした文字列に変換するためのメソッドです。

jshell> var text = "  abc\n" +
   ...> "   def\n" +
   ...> "    ghi"
text ==> "  abc\n   def\n    ghi"

jshell> System.out.println(text)
  abc
   def
    ghi

jshell> System.out.println(text.stripIndent())
abc
 def
  ghi
|  警告:
|  java.lang.StringのstripIndent()は推奨されておらず、削除用にマークされています
|  System.out.println(text.stripIndent())
|                     ^--------------^

jshell>

なお、テキストブロックを使用すると、勝手に前詰めされます。コンパイル時にこのメソッドを使用しているかどうかまでは調べていないので、ぜひ調べてみてください。

translateEscapesメソッドはエスケープシーケンスを変換するメソッドです。

たとえば、"\n"という2文字で表されているエスケープシーケンスをU+000Aに置き換えます。

とはいうものの、このメソッドの使い道がイマイチよく分からないんですよね。文字列を出力する時には、置き換えられていたので、意識することはなかったのですが... どういう時に使うんだろう?

なお、このメソッドではUnicodeのエスケープは置き換えを行わないそうです。

 

java.nioパッケージ

Buffer系のクラスにメソッドがいろいろと追加されました。

Bufferクラス

Bufferクラスにはsliceメソッドがオーバーロードされました。

  • Buffer slice(int index, int length)

今まで使われていたsliceメソッドは引数なしでcurrent positionとlimitの間を切り出すメソッドでした。

オーバーロードされたのは明示的にインデックスと長さを指定して切り出すために使用されます。

実際には内部で、引数なしのsliceと同じような処理行っているので、使い勝手をよくするためのメソッドということですね。

jshell> var buffer = ByteBuffer.allocate(5)
buffer ==> java.nio.HeapByteBuffer[pos=0 lim=5 cap=5]

jshell> buffer.position(2)
$3 ==> java.nio.HeapByteBuffer[pos=2 lim=5 cap=5]

jshell> var buffer2 = buffer.slice()
buffer2 ==> java.nio.HeapByteBuffer[pos=0 lim=3 cap=3]

jshell> var buffer3 = buffer.slice(2, 3)
buffer3 ==> java.nio.HeapByteBuffer[pos=0 lim=3 cap=3]

jshell>

同じ切り出しを引数なしのsliceメソッドと、引数ありのsliceメソッドでやってみました。

なお、Bufferクラスはアブストラクトクラスなので、ByteBufferクラスを使用しています。

もちろん、他のCharBufferクラスなどでも引数ありsliceメソッドがオーバーロードされています。

ByteBuffer/CharBuffer/DoubleBuffer/FloatBuffer/IntBuffer/LongBuffer/ShortBufferクラス

それぞれのクラスにgetメソッドが2つ、putメソッドが2つオーバーロードされています。

Bufferクラスに追加されたsliceメソッドは返り値の方がBufferクラスなのですが、ByteBufferクラスなどでオーバーロードされたメソッドは返り値の型がそれぞれのクラスなので、Bufferクラスでは定義できないのでした。

ただ、使い道はどのクラスでも同じなので、ここではByteBufferクラスで説明します。

  • ByteBuffer get(int index, byte[] dst)
  • ByteBuffer get(int index, byte[] dst, int offset, int length)
  • ByteBuffer put(int index, byte[] src)
  • ByteBuffer put(int index, byte[] src, int offset, int length)

今までのgetメソッドはpositionの位置から読み込みを行うか、インデックスを指定して1バイト読み込むかのどちらかしかありませんでした。新しくオーバーロードされたgetメソッドはインデックスを使用して第2引数のバイト配列に読み込みを行います。

jshell> var b = new byte[]{0, 1, 2, 3, 4, 5}
b ==> byte[6] { 0, 1, 2, 3, 4, 5 }

jshell> var buffer = ByteBuffer.wrap(b)
buffer ==> java.nio.HeapByteBuffer[pos=0 lim=6 cap=6]

jshell> var bytes = new byte[2]
bytes ==> byte[2] { 0, 0 }

jshell> buffer.get(2, bytes)
$13 ==> java.nio.HeapByteBuffer[pos=0 lim=6 cap=6]

jshell> bytes
bytes ==> byte[2] { 2, 3 }

jshell>

ここでは、インデックス2から2バイト読み込んでます。

putメソッドも同じで、今まではpositionから書き込みを行うか、インデックスを使用して1文字の書き込みを行うだけだったのが、インデックスを使用してバイト配列で書き込みが行えるようになりました。

MappedByteBufferクラス

MappedByteBufferクラスにはforceメソッドがオーバーロードされました。

  • MappedByteBuffer force(int index, int length)

今までのforceメソッドは引数なしで、メモリにマップされた内容を強制的にファイルに書き出すというメソッドでした。オーバーロードされたforceメソッドはインデックスと長さを指定して強制的にファイルに書き出しを行います。

 

java.nio.fileパッケージ

FileSystemsクラス

FileSytemクラスでは、3種類のnewFileSystemメソッドがオーバーロードされています。

  • FileSystem newFileSystem(Path path)
  • FileSystem newFileSystem(Path path, Map<String, ?> env)
  • FileSystem newFileSystem(Path path, Map<String, ?> env, ClassLoader loader)

newFileSystemメソッドはFileSystemクラスのファクトリメソッドなのですが、今までは場所を指定するのにURIを使用していました。Pathインタフェースも使えたのですが、クラスローダ―を指定する必要がありました。

Java 13で追加された3種類はどれもPathインタフェースで場所を指定します。

ZIPファイルやJARファイルをファイルシステムとみなして扱うような時に使用するメソッドなのですが、パスで指定できるようになったので、少しだけ扱いやすくなりました。

jshell> var path = Paths.get("C:\\Program Files\\Java\\jdk-13\\lib\\src.zip")
path ==> C:\Program Files\Java\jdk-13\lib\src.zip

jshell> var fileSystem = FileSystems.newFileSystem(path)
fileSystem ==> C:\Program Files\Java\jdk-13\lib\src.zip

jshell> Files.list(fileSystem.getPath(".")).forEach(System.out::println)
./jdk.zipfs
./jdk.xml.dom
./jdk.unsupported.desktop
./jdk.unsupported
./jdk.security.jgss
./jdk.security.auth
./jdk.sctp
./jdk.scripting.nashorn.shell
./jdk.scripting.nashorn
./jdk.rmic
./jdk.pack
./jdk.net
    <<以下、省略>>

jshell>

 

java.time.chronoパッケージ

JapaneseEraクラス

日本の元号を表すクラスですが、令和が定数として追加されました。メジャーバージョンとしてはJava 13からということです。

  • REIWA

javax.annotationパッケージ

ProcessingEnvironmentインタフェース

アノテーションの処理を行う時に使用するインタフェースがProcessingEnvironmentインタフェースです。

  • boolean isPreviewEnabled()

プレビュー機能を使用する時にはコンパイル/実行時に--enable-previewオプションを使用します。isPreviewEnabledメソッドは--enable-previewが指定されていればtrue、いなければfalseを返します。

 

javax.lang.modelパッケージ

SourceVersion列挙型

毎度のお約束ですが、定数にJava 13が追加されました。

  • RELEASE_13

 

javax.lang.model.elementパッケージ

ExecutableElementインタフェース

ExecutableElementインタフェースは、クラスやインタフェースのメソッド、コンストラクタなど実行できる要素を表すためのインタフェースです。

  • TypeMirror asType()

ExecutableElementインタフェースで表している実行要素がメソッドなのか、コンストラクタなのか、初期化子なのかを判別するために使用します。

 

javax.toolsパッケージ

StandardJavaFileManagerインタフェース

javax.toolsパッケージはコンパイラ系のクラスが定義されているのですが、そこで使用するファイルマネージャがStandardJavaFileManagerインタフェースです。

  • Iterable<? extends JavaFileObject> getJavaFileObjectsFromPaths​(Collection<? extends Path> paths)

これまで使われていたgetJavaFileObjectsFromPathメソッドは引数の型がIterableインタフェースだったのですが、Collectionインタフェースを引数にとるメソッドがオーバーロードされました。

逆に引数の型がIterableインタフェースの方は@Deprecatedになっています。

 

javax.xml.parsersパッケージ

DocumentBuilderFactoryクラス

まさか、この期におよんでDOMパーサーに機能が追加されるとは思いもよりませんでしたw

  • DocumentBuilderFactory newDefaultNSInstance()
  • DocumentBuilderFactory newNSInstance()
  • DocumentBuilderFactory newNSInstance​(String factoryClassName, ClassLoader classLoader)

いずれも名前空間を認識したDocumentBuilderFactoryオブジェクトを生成するファクトリメソッドです。

 

他にもセキュリティ系のAPIに追加がありますが、よく分からないので省略します。

ということで、Java 13のAPIの変更をまとめてみましたが、やっぱり変更は少ないですね。